
宮本武蔵が最後に過ごした場所「熊本」で武蔵の最後の日々が綴られる
2008年に東京上野の森美術館で行われた同展が熊本にて催された
それは、ただ単に展覧会の巡回というだけの意味を持つ
そして内容は、圧倒的
すばらしい内容であった

紙面でコマ割りやページ展開によって展開されるマンガという物語を美術館の空間で行う
しかも連載中の作品の主人公である宮本武蔵の最後の瞬間を描いてみせる
そこに、単純に媒体が変わるという以上の劇的な変化が生まれる
もちろん絵のサイズやそれによる書き込みの緻密さもあるのだろう
もともと映像的、とういうよりも流れといったものをほかの作家とは比べられないほど見事に表現されている
感覚的というか、物語のそして絵の奥にあるものを描こうとしているように思えていたのだが、この展覧会でそれはより一層顕著に顕われている
この展覧会は、マンガの域を遥かに超えて、芸術、モダンアートの領域に達そうとしている
コミック的な表現を表層だけを使用したリキテンシュタインなどよりも、よっぽどモダンアートなのではとさえ思える
北野武は映画に進出し、映画という文脈上で独自の映像感覚をもって理論的に彼の世界観を作り出した
ただし「ソナチネ」までだが、、
松本人志は、あくまで自分のもっているイメージを映画という媒体でどう表現するかという挑戦をしている
大友克洋は、映画という領域に足を踏み入れ、それ以前のオーラを失ってしまった
井上雄彦は、同じ過ちをおかさない人なのだろう
しかし、井上の方がより映像的な発想をしていると思うが
だが、井上雄彦はアートだ映画だマンガだのという分類などどうでもいいのではないだろうか
そんなカテゴライズすら彼の想像力を凌駕しきれないレベルまで達しているのではないだろうか
その主人公の最後の瞬間を経験し、物語は一層の感慨をもって受け止められ、より深みを増す

同展は、この後大阪、仙台へと重版を重ねるようである
2010年年初に開かれる<大阪版>
物語は終盤に差し掛かっており、やもするとそのころには本編の連載は終了しているかもしれない
そうするとこの「最後のマンガ展」の受け止め方はまた違ってくるであろう
そこにもぜひ足を運んでみたい
時間と、空間によってその物語がどう変容し、そして進化していくか
興味が尽きないところである
久しぶりに感動させられる才能を目の当たりにさせていただいた

おっと

・井上雄彦 最後のマンガ展 重版[熊本版]
・2009年4月11日(土)〜6月14日(日)
・熊本市現代美術館
TEL:096−278-7500
FAX:096-359-7892
[井上雄彦 OFFICIAL HP]
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[最後のマンガ展 重版 <大阪版>]